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朝から晩まで動いているのに、月末になると利益が残っていない。独立したばかりの1人社長ほど、この状態に陥りやすいものです。
原因は営業力でも物件でもなく、案件を断る基準を持っていないことにあります。
私も独立した頃は、来る案件を全部受けていました。断る勇気が持てないまま全国を飛び回り、交通費で赤字を出し、会社が潰れかけた時期があります。
この記事では、その失敗から作った「断るべき案件」4つの基準と、受けるべき案件の条件を、失敗談ごと整理します。
結論:忙しいのに儲からないのは、案件を選んでいないから
まず結論からお伝えします。1人社長が断るべき案件は、次の4つです。
- 30万円以下の低単価案件
- 移動に2時間以上かかる遠方案件
- 複数社に依頼している相見積もり案件
- 理念・専門領域から外れる案件
私も独立した頃は、この4つを全部受けていました。依頼が来ること自体が嬉しくて、断るという発想がなかったんです。

全部受けちゃダメなんですか?
受けられるなら受けていいんですよ。ただ、よくよく考えたら割に合わなかったよね、という案件が確実に混ざってきます
1人社長には、自分の時間しか元手がありません。割に合わない案件に時間を食われると、収益にも成果にもつながらないまま1日が終わります。
だから、断る基準をあらかじめ持っておく。ここから、4つの基準を私の失敗談と一緒に見ていきます。
仕事を選ぶことに罪悪感はいりません。断って空いた時間を目の前の案件と次の営業に使うことが、結果的に依頼者への誠実さになります。
断るべき案件①:30万円以下の低単価案件
1つ目の基準は報酬額です。私は今、仲介報酬30万円以下の案件は受けないことを目安にしています。

この金額以下なら断る、という明確な基準はあるんですか?
私の場合は30万円がボーダーですね。1人社長が5万円、6万円の案件を受けていても、疲弊するだけなんですよ
独立した当時は、賃貸住宅の8万円も、17万円の店舗仲介も受けていました。それはそれで、いい経験にはなりました。
ただ、続けるうちに構造が見えてきます。手間は、報酬に比例しません。
100万円の仲介が10万円の10倍忙しいかというと、そんなことはない。せいぜい2倍で、逆に10万円のほうが大変なことすらあります。
100万円の賃料を払える依頼主は大手やハイクラスの事業者が多く、話が早い。10万円の案件は個人の依頼主が多く、揉め事が増えやすいからです。
10万円の案件を10件やるより、100万円を1件やったほうが、コストパフォーマンスは全然いいんです
現地に10回通って、決まらなかった話
私自身、低単価で失敗した案件があります。報酬10万円の案件で、現地に10回通って、決まりませんでした。

交通費だけでマイナスじゃないですか?
マイナスです
住宅なら、内見3〜4回で決まります。でも店舗や事務所は、借りる側にとって経営活動です。
失敗すれば倒産のリスクがあるから、誰も思い切ってアクセルを踏めません。だから10回内見しても決まらない。
一方で、100万円クラスの「いい物件があったら教えて」という依頼は、すっと決まっていきます。決まりやすさまで含めると、低単価案件の実質コストは見た目よりずっと重いのです。
店舗が住宅のように決まらない構造は、店舗仲介が難しいと言われる理由で詳しく整理しています。
報酬が下がるほど依頼主は個人に近づき、内見は増え、揉め事のリスクも上がります。交通費と時間を引くと赤字になる案件は珍しくありません。
断るべき案件②:移動に2時間以上かかる遠方案件
2つ目の基準は距離です。これも、私の失敗談から話させてください。
独立して4ヶ月目、私は「全国行脚」をやりました。横浜に事務所があるのに、月曜は愛知、火曜は大阪、水曜は岡山、4日目に九州から帰ってくる。
1回それをやって、「あ、体持たんわ」と。これは無理や、と気づきました

その相談って、オンラインではできないんですか?
できます。でも当時は、行くことが正義だと思っていたんですよ
独立4ヶ月目で、がむしゃらにやらないといけない気がしていた時期です。交通費も宿泊費も馬鹿になりません。博多から東京まで、4時間半かけて新幹線で帰ってきたこともありました。
契約まで進めば、最低2回は現地へ行きます。北海道なら往復だけで4〜5万円。これを繰り返せば、報酬をもらっても赤字です。
私の基準は、移動に2時間以上かかる案件は原則受けないこと。
1人社長の商品は自分の時間です。移動2時間の案件は、その日のほかの仕事を全部止めます。報酬から交通費だけでなく、失った時間も引いて判断してください。
断るべき案件③:複数社に依頼している相見積もり案件
3つ目は、依頼のされ方を見る基準です。何社にも同時に依頼している「滑り止め」の案件は、受けても決まらないことが多い。

依頼してくれた方が言わなかったら、気づけないんじゃないですか?
気づけます。アットホームなどを見て、その物件がネットに載っているかを確認するんです
私の基準はシンプルです。広告を出しているのが1社だけなら受ける。2社以上なら断る。ネットに載っていなければ、全然やります。
理由は確率です。他社が先に広告を出しているなら、問い合わせも先に他社へ流れています。後から受ける側は、スタートの時点で完全に出遅れているわけです。
正直に言うと、「俺のとこに最初に来てよ」って、ちょっと焼きもちも焼いちゃうんですけどね
この基準も、最初はありませんでした。設けてからは、断って空いた時間を別の仕事と次の営業に回せるようになりました。
依頼を受けたら、まず物件名や住所でポータルサイトを検索します。2社以上が同じ物件を広告していれば相見積もり、ネット未掲載なら専願に近い依頼と判断できます。
断るべき案件④:理念・専門領域から外れる案件
4つ目は、金額や距離では測れない基準です。私はテナント専門と決めているので、居住用賃貸の相談は基本的に断っています。
実は、1件だけ受けたことがあります。テナント一本でやると決めたのに、そこでブレてしまった。あれは良くなかったと、今でも思っています。
断るときは、こう伝えています。
私はテナント専門で、住宅の知識では勝負できません。あなたを幸せにする確率が高いのは住宅に強い人だから、こういう方を紹介しますよ
これで嫌われるどころか、喜ばれます。専門外を無理に受けるより、依頼者のためになるからです。
理念といっても、立派なものは要りません。私の1期目の理念は「店舗不動産革命」で、正直、それに沿わない案件が何かなんて自分でも分かりませんでした。
決めていたのは1つだけ。店舗不動産から、ずらさない。
今は「不動産業にテナントという選択を」というミッションに変わり、YouTubeでの発信もフランチャイズも、この軸の上に乗っています。
完成した理念は後からでかまいません。自分がやらないと決めた領域を1つ持つだけで、迷う案件の大半はその場で判断できるようになります。
受けるべき案件と、断るほど専門性が磨かれる理由
ここまで断る基準を並べてきました。受けるべき案件は、その裏返しです。
- 高単価の案件
- 近隣の案件
- 「あなたにお願いしたい」と言われる専願の案件(相談先が1〜2社まで)
- 自分の理念・ミッションに沿う案件
店舗仲介がなぜ高単価を成立させやすいのかは、店舗仲介が儲かる理由で数字から解説しています。
そして、この動画でいちばん伝えたかったことがあります。
断れば断るほど、専門性が磨かれていくんですよ。「あの人はテナント専門だから、テナントならあの人に頼もう」と、指名で依頼が来るようになる
断ることは、目の前の売上を失うことに見えます。実際に起きるのは逆で、断るたびに自分の看板が先鋭になり、次の良い案件を呼び込みます。
独立してから伸びる人と潰れかける人の分かれ目は、こうした基準を持っているかどうかです。独立前後にやってしまいがちな失敗は、不動産独立でNGな人の特徴でも整理しています。
低単価・遠方・相見積もり・理念外。次に迷う案件が来たら、まずこの4つに当てはまるかを確かめてください。当てはまるのに受けるなら、受ける理由を言葉にしてからにしましょう。
よくある質問
Q独立したばかりで実績がありません。それでも断って大丈夫ですか?
私も独立当初は8万円の賃貸や17万円の店舗仲介を受けていて、経験になった面は確かにあります。初期は経験を積む目的で受ける判断もあっていいです。
大事なのは、無自覚に全部受け続けないこと。「いつから、どの基準で断るか」を先に決めておくと、初期の消耗を経験として回収できます。
Q相見積もりの案件でも、決まることはありますよね?
あります。私も相見積もりの中で決まった案件はありますが、確率論で言えばやはり少ないです。
他社に先に問い合わせが流れている構造は変わらないので、断った時間を専願の案件と次の営業に回すほうが、トータルの売上は伸びます。
Q「あなたにお願いしたい」と指名される状態は、どう作ればいいですか?
断り続けて専門性を磨いた先に指名が来る、というのがこの動画の結論です。あわせて、その専門性を見つけてもらう発信の導線が要ります。
営業をかけずに問い合わせが来る仕組みは、不動産開業で営業しない集客は可能?で解説しています。
Q理念がまだ決まっていません。何を基準に断ればいいですか?
完成した理念は不要です。私の1期目の理念も「店舗不動産革命」という漠然としたもので、決めていたのは「店舗不動産からずらさない」の1つだけでした。
「これはやらない」を1つ決めれば、それが最初の基準になります。
Q低単価の相談しか来ない場合は、どうすればいいですか?
単価は、受ける側の専門性と商圏設計の結果でもあります。近隣に絞り、専門を立てて「この分野ならこの人」を作ることが、単価を上げるいちばんの近道です。
店舗仲介で売上を伸ばす具体策は、店舗仲介の売上戦略にまとめています。
まとめ:断る基準が、1人社長の利益率を決める
今回の内容を、明日から使える形で整理します。
全部受けることは誠実さではなく、消耗です。断る基準を持ったその日から、1人社長の利益率は変わり始めます。
そして、案件ごとの損益を判断するには、毎月出ていく固定費を知っておくことが欠かせません。LINE登録でお渡ししている「不動産独立開業リアル固定費一覧(月100万円)」は、私の会社の固定費をそのまま公開した資料です。
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